河童は、鬼・天狗に続いて、日本を代表する妖怪です。
地域によって呼び方がさまざまあり、その姿かたちもひとつにとらわれません。
共通する点は、きゅうりと相撲が好きで、人間の尻子玉が好きなこと。
今回は、河童の発祥からその種類まで、詳しく解説します!
ふるまいとプロフィール

どんな妖怪
属性:水。水神や水の精霊、川と関係があります。
好きなもの:夏の野菜(川魚やキュウリ)、相撲、人間の肝
場所:川や沼、地域によっては海の中に暮らす。
ふるまい:鬼や天狗に比べて、人間にとってそこまでの悪さはしないようです。
主なふるまいは、
- 「いたずら好きだが憎めない」
- 「人の仕事を手伝った」
- 「河童を助けたらお礼に魚をもらった」
など、親しみを感じるふるまいが多いです。
一方で、「人の肝」が好きなため、水辺を通りかかった人を川深くに引きずり込んで命を奪うこともあります。
人を襲うおもな目的は、「尻子玉」(しりこだま)というものです。
「尻子玉」とは、人の肛門内にあると考えられた架空の臓器のこと。
かたちは、ラムネ瓶のビー玉状で、河童はこれを食べたり川の龍神にささげたりするといいます。
迷信では、河童に「尻子玉」を抜かれた人は、「ふぬけ」になるといわれます。
数々の名前
かっぱの語源は、関東地方の方言「かわっぱ」です。
川に棲む「わらべ(子ども)」というイメージがあります。別名は河太郎(かわたろう)。
全国では、さまざまな呼び名があります。
河童の見た目によって、その呼び名も変わります。
河童の呼び名は、おおきく、4種類のグループにわかれます。
水神系グループ
- 東北地方のめどち
- 北海道のみんつち
こども(わらべ)系グループ
- 関東のかっぱ、かわらんべ
- 九州のがらっぱ
動物系グループ
- 中国・四国地方のエンコウ
- 北陸地方のかぶそ、かわっそー
その他
ひょうすべ、祇園坊主、サンボン、テガワラ
発祥
河童の起源
河童のはじまりは、諸説あります。
- 大昔の人形がかっぱになった説
- 水神が信仰対象から外れて堕ちて河童になった説
- アジア大陸からやってきたある人が河童になった説など。
この説は、ひとつひとつ奥深くて面白いので、簡単に紹介しておきます。
①大昔の人形がかっぱになった
大昔、大工が神社を建てるさい、藁で編んだ草人形に魂を吹き込みました。
意識をもった草人形は、大工の手足となって、造営作業を手伝います。
仕事が完了すると、不要となった草人形は、川へと流されました。
これが、のちに河童になったのだそうです。
②元水神説
河童と水神の関係は深いです。
河童は相撲好きですが、相撲とは古代に水神への捧げものとして行なわれていた「神事」によります。
相撲はスポーツではなく、日本各地の権力者が土地の行く末を占うためおこなっていました。
また、神と水の精霊との闘いであるともされます。
神が精霊を負かすことで、農民にとって不可欠の水の恵みを与えさせていました。
キュウリもこうした神事で供物としてささげられていました。
③渡来人説
ここでいう「渡来人」は、古代ユダヤ人のことです。
ユダヤ語には、「キッパ」という言葉があります。
キッパは、ユダヤ教徒の男性が被る小さな帽子のこと。
河童の語源はここからきているという人もいます。
その実際の足跡は、熊本県八代市の「河童渡来之碑」に確認できます。
313年~399年頃、古代中国(当時は呉)から九千坊(きゅうせんぼう)という河童が渡来してきました。
この河童は9千匹もの仲間を引き連れていたといいます。
また、河童との共通点として、ユダヤ民族はキュウリを食べる習慣があるそうです。
あくまで「仮説」なので、真相は定かでないですが、好奇心をくすぐられる説です。
出没地域
河童は、全国津々浦々、川と沼があるところでよく発見されました。
- 九州:豊前、筑後
- 牛久沼と小川芋銭(茨城県)
- 神奈川県茅ケ崎市
- 広島県広島市 猿猴川
- 長野県千曲川
見た目や大きさ

からだ:緑色または赤。
頭部に皿がついており、基本は水分があって潤っています。
この皿が割れたり、水分不足で乾いたりすると、河童の死につながります。
人の姿をとりながら、鳥のくちばし・背中に亀のような甲羅があります。
もっとも変わっている点が、両腕が体の中で一本につながっていることです。
そのため、片方の腕を引っ張ると、もう一方の片腕が縮んで抜けてしまいます。
大きさ:子どもくらい。
地域によっては、赤ん坊の姿だったり、亀の姿、頭に皿がないタイプとさまざまいます。
河童の種類
河童は一つのタイプに限りません。
いろいろな時代、いろいろな地域で、本当にさまざまな性格・すがたの河童伝説が残っています。
伊草の袈裟坊
(いぐさのけさぼう)

画像引用元:【妖怪図鑑】 新版TYZ
地域:埼玉県比企郡川島町、宮城県柴田郡(?)
河童の親分です。
袈裟坊の部下たちは、この河童に毎年人間のはらわたを献上することになっています。
磯天狗
(いそてんぐ)

地域:愛知県佐久島、和歌山県須賀利、三重県
能力:磯をもちいて火を灯し、光をつくる
天狗という名前がつきますが、河童の一種です。
磯辺で怪しい光を灯します。
一説には、海岸で木の近くにしびを積んでいると、磯天狗が磯をもちいて光をつくって見せるとあります。
海御前
(うみごぜん)

画像引用元:【妖怪図鑑】 新版TYZ
地域:福岡県北九州市門司区大積
河童の女親分です。
5月5日のこどもの日になると、従者の河童たちを解放してやります。
そして、そばの花が咲くまでに戻ってこいといって、人里へ送ります。
そばの花は海御前の弱点で、なぜなら花の白色が平家の旗印の白を思い出させるからだといいます。
一時そばの花が咲いてしまうと、家にこもって毎日おびえて暮らすのだそうです。
海御前はもともとは人間で、平家の大将能登守教経(のりつね)*の母あるいは妻とされます。
元貴族ですが、人を食らう場合は源氏の人以外は手を出しませんでした。
*平教経…平安時代に活躍した平家の猛将。源義経の宿敵とされる。平清盛の甥。
猿猴
(えんこう)

地域:広島県、山口県、高知県
容姿:魚のような肌、顔と手は猿、両足は人間に似ています。長い頭髪、赤ら顔。
能力:おばあさんや若い女性に化けることができます
別名エンコ、エヌコ、エーコ。
両腕が伸び、人間の尻子玉を好む点は河童と共通しています。
河川や池に暮らしています。金物や人間のツバを嫌い、女性にちょっかいをかけるのが好きです。
説話
地域:高知県長岡郡吉野川流域
夜に漁り火をつけて川底の魚を取っていると、市松人形が流れてきます。
この子を棒か何かで突くと、にっこり笑いだします。エンコウが女の子に化けているのだそうです。
エンコウの仲間
シバテン
高知県の河童。
旧暦6月7日の祇園の日に川に入って、エンコウに変身します。
この日には好物のきゅうりを川に流すといいます。
タキワロウ
山に暮らすエンコウの仲間。
山口県の萩市に生息しています。
山と川にそれぞれ3年暮らし、海に入ったのちエンコウとなります。
カシャンボ

地域:和歌山県、三重県(熊野地方)
容姿:6~7歳ぐらいの子どものよう。頭は頭部中央だけ毛が残り、青い服を着ています。
別名カシランボウ、カシャボ、ガシャンボウ、カシラ。
川の河童が山に入ったらカシャンボになります。
山に暮らしても、川にいたころと行動形態は特に変わりません
牛や馬にちょっかいをかけるのが好きで、夜には川に潜んで家畜小屋の牛にいたずらを仕掛けます。
説話
地域:新宮市
毎年河童が新宮川をさかのぼってくる時期になると、河童が挨拶にきます。
姿は見せず、一匹がくるたび小石を家に投げて家の人に知らせます。
それから山にこもりカシャンボとなるのです。
地域:和歌山県大塔町
ここでのカシャンボは一本足。
別名ヒトツダタラ。雪が降った翌朝、一本足の足跡を見ればそれはカシャンボとされます。
登山者に勝負を仕掛けますが、こちらがつばを吐くとあっさり負けます。
昔、馬車の荷積みをしていると、カシャンボが現れて悪さをするといわれていました。
ガメ

画像引用元:日本妖怪カルテ
地域:富山県上新川郡大田村、石川県小松能美郡、福岡県久留米地方
能力:子どもに化けることができます。
容姿:亀のような姿。甲羅には鱗の模様があり、お腹が赤くふさふさしたしっぽをもちます。
亀のような河童。
100年経つと、カーラボーズになります。
それは赤い人間のなりをして、頭には水が入った鉢があります。
また、ガメはよく美人にとりつきます。これに憑かれると病気になるといわれます。
おわりに
今回、調査していて一番興味深かった点は、天狗という名前を持つ河童や、エンコウという河童には見えない姿の妖怪がいることです。
特に、エンコウは、個人的に「本当に河童?」と思うほどの印象を受けました。
大昔の日本人は川が生活の一部でしたから、河童もその関係でよく遭遇したのでしょうね。
みなさんの河童データベースの一助になりますように!