日本ではお馴染みの神様・龍。ゲームや漫画作品でも圧倒的な存在感を放っていますね。
龍の神様は龍神(あるいは蛇神)と呼ばれますが、西洋ではドラゴンとして、悪魔として見なされています。
なぜ神と悪魔、地域によって立場が対照的なんでしょうか。そもそも、龍とドラゴンは同じ存在なんでしょうか?
この記事では、東洋の龍と西洋のドラゴンの違い、龍神の種類をご紹介します!
龍神の概要

龍神の基本的なプロフィールから見ていきましょう。
プロフィールとふるまい
龍神の住むところ:河川、湖、沼、海など。水のある所に暮らしています
容姿:龍神の姿というと、画像のようなものが浮かぶでしょう。
世界共通の外見として、
- 頭はラクダ
- 角はシカ
- 眼は鬼
- 耳は牛
- いただきは蛇
- 腹は蜃(しん。ヘビとキジが合体した幻獣)
- うろこはコイ
- 爪はタカ
- 手のひらはトラ
全身にこうした特徴があります。
一口に龍といっても、さまざまな動物や生き物のエッセンスが組み合わさっているんですね。
同義の神として、ヘビも信仰されています。
また、神様らしさを強調する、ヒゲが口元にあります。龍神といえば、これですよね。
龍神の声:銅鑼(どら) を打ったような音に似ているそうです。
いつから出現したのか
日本各地に伝わる龍神は、古代中国で発生しました。
漢の時代には、すでに水神として信仰または崇拝されていたんです。
意外に神様としては歴史が長いんですよね。
日本には、弥生時代に伝来しました。
その痕跡は、池上曽根遺跡(大阪府和泉市と泉大津市にまたがる場所)に見ることができます。
龍の文様入りの土器が出土しているんです。
龍神が入ってくる前、日本では蛇神信仰がありました。
この蛇神信仰に加え、各地の水神も取り入られて、トータルで龍神信仰につながった、と考えられています。
次は、神様から一転して、邪悪な妖魔・ドラゴンについて見ていきたいと思います。
西洋の妖魔、ドラゴン

龍を英語に訳すとDragonとなりますが、その性質はまったく正反対です。
キリスト教が最高権力をもつヨーロッパでは、神様に対峙する悪魔として扱われています。
イコン(キリストの絵画)では、大天使ミカエルがドラゴンを退治する絵が見られます。
キリスト教では、ドラゴンは魔王(サタン)の化身という立場に位置付けられています。
龍と区別するためにも、ドラゴンのプロフィールもおさえておきましょう。
ドラゴンのプロフィール
ふるまい:「ヒーローの敵」として描かれることが多いです。
神話では英雄の「障害物」として、キリスト教では神の敵として暗躍します。
悪を象徴し、毒性があって吐息は火炎です。
容姿:龍と異なり、4種類ほどあります。
- 四肢をもつもの
- 翼つきで一対の足があるもの
- 翼はあるが足がないもの
- 翼も足もないもの
おおまかに描写すれば、トカゲとヘビが合体したような姿です。
龍神と同様、おもにヘビがベースにあります。
住むところ:水中や地下。
龍神は水神の要素が強いですが、ドラゴンは炎属性であることがほとんどです。
能力:ゲームや小説で描かれるように、魔法を操ります。
特殊能力では、不死だったり予知能力があって未来を見ることができたりします。
龍とドラゴンの違い
両者の基礎をおさえたところで、龍とドラゴンの違いについて解説していきます。
龍とドラゴンの違いは、大きく分けて5つ挙げることができます。
①容姿:龍はヘビの特徴をほとんど残していますが、ドラゴンの原型は爬虫類(トカゲ)や恐竜に大きくよっています。
②住むところ:龍は川や海、ドラゴンは爬虫類の影響を受けて洞窟や岩場に生息しています。
③特殊能力:龍は水神の性格をもつことから、主に天気(雨や雷)を操ります。
いっぽう、ドラゴンは悪しき存在なので強い毒性の息吹を吐きます。
④好物:龍は人間を助ける代わりにいけにえとしての人間を求めました。
ドラゴンは、RPGにあるような貴重な宝を奪ったり、女性(姫)などをさらったりします。
⑤人間との関係:神獣それぞれの背景には、宗教が関係しているといわれます。
古代の日本には「八百万の神」という考えがあり、動物や自然現象に神様を見ました。
一方の西洋は、「神=人間」という観念からヘビなどは「下等な存在」に位置付けました。
そこにキリスト教・ユダヤ教の「悪魔概念」が手伝って、「ドラゴン(爬虫類)=凶悪な怪獣」となったのです。
龍神の種類

日本と中国の龍神をご紹介します。神様によっては聞いたことがある名前があるかもしれません。
日本の龍神
印幡沼の竜(いんばぬまのりゅう)
千葉県印幡沼に暮らしていたという巨竜です。
人間の青年に変身することができ、近くの村によく遊びに行っていました。
青年の首には独特なあざがあり、人々はこれを竜のうろこだと認めていました。
地域:千葉県
人々はそれぞれの肉塊が見つかった場所に、竜角寺・竜腹寺・竜尾寺を建てて沼の竜の魂を鎮めました。
八頭の大蛇(ヤマタノオロチ)
古事記(日本神話)に登場する、巨大なヘビの魔物です。
龍神というよりドラゴンの概念に当てはまり、ヤマトタケルノミコトに退治されます。
出典:日本神話
容姿:頭と尾っぽが8つあります。その胴部には植物が生えています。両目は赤ほおずきのように赤いです。
大きさ:8つの山・8つの谷を覆うほど。
龍馬、竜馬(リョウマ、リュウメ)
中国と日本で信仰されていた、神の使いです。
中国では天上界と下界を行き来し、皇帝の陰陽思想を表す存在と考えられていました。
日本では、「非常に優れた馬」という意味を持ちます。
幕末の偉人・坂本龍馬の名もこの神獣から来ています。
地域:古代中国と日本
容姿:馬の上半身と、龍の身体を持っています。
夜刀神(ヤトノカミ)
常陸国(現在の茨城県周辺)の伝説に伝わる蛇神です。
「ヤト」は「谷」を指し、谷あいの低湿地を意味します。
出典:「常陸国風土記」行方郡
容姿:ヘビ
中国の龍神
色別の龍神
青龍や黄龍をはじめとして、六色に分かれた龍神が存在しています。
- 青龍(風水における四神の一つで、東方を守る龍神でもあります)
- 黄龍(五行説に基づく、土属性の神様)
- 黒龍
- 白龍
- 赤龍
- 緑龍
逸話としては、「大黒龍」と「小黄龍」をピックアップします。
大黒龍(だいこくりゅう)
大黒龍は、水の神です。
中国・黒龍江という場所に住み、この黒龍は「禿尾巴老李(とうびはくろうり)」と呼ばれています。
意味は、「禿げ頭の龍」です。
小黄龍(しょうこうりゅう)
チベット系の一族に伝わる、大黒龍を退治した龍のことです。
大理という地域に暮らしています。
応龍(おうりゅう)
古代では、龍が千年の命を得た後、翼が生えて応龍になるといわれていました。
もともとは天に暮らす神の一員でしたが、神と人間の争いのさい、応龍は人間側につきました。
そのことで神の世界から追放され、山奥に暮らすようになったのです。
地域:南末端の霊山、恭丘山
能力:風と雨を操ります。
四海竜王(しかいりゅうおう)
中国の海(または世界)にて、東西南北それぞれに配された龍王のことです。
四方の龍神には、それぞれ名前があります。西遊記にも登場します。
- 東海龍王:敖光(ごうこう) 長男とされています。
- 西海龍王:敖順
- 南海龍王:敖明
- 北海龍王:敖古
まとめ
気高く荘厳な神、龍神。
現在でこそ漫画やゲームの影響で身近になりましたが、大昔はいけにえを用意するほど位の高い神として崇められていました。
対して、西洋のドラゴンはサタンの化身です。
善と悪、それぞれ対極の位置にある龍とドラゴン。
ヘビという生き物から、昔の人々は神秘的な世界を見出したんですね。
これからも奥深い龍の世界を楽しんでください!