大きな翼を持って、突如として上空に現れる。
そのものは人を傷つけるのか、恵みをもたらすものか。
鳥は、生き物であっても神獣であっても古来から人々にとって身近な存在でした。
この記事では、世界の鳥に関する神様・幻獣をまとめています。
日本と中国の神鳥
日本の神鳥・幻獣
寺つつき

- ふるまい くちばしで寺の材木を突き、建物を壊そうとします。
- 出現期 飛鳥時代/『今昔画図続百鬼』(鳥山石燕の妖怪画集)より
- 出没地域 四天王寺や法隆寺などの寺
- 姿形 きつつき あるいは アカゲラ
入内雀(にゅうないすずめ)
別名実方雀。藤原実方という歌人の霊魂が、スズメの形をとった妖怪です。
「内裏(宮殿)に侵入するスズメ」という意味があります。
- ふるまい 宮殿の食卓に現れて、勝手に料理を食べてしまいます。
- 出現期 平安時代(一条天皇の治世)
- 出没地域 陸奥国(東北地方)、京都
- 姿形 生き物のニュウナイスズメと同じです。
中国の神鳥
朱雀(すざく)

- ふるまい 中国神話において、東西南北を守護する四神(東に青龍、西に白虎、北に玄武の配置)の一つです。
朱雀は、南方を守護します。陰陽五行思想では、火・夏をつかさどっています。 - 出没地域 中国全土
- 姿形 鳳凰(ほうおう)によく似た鳥の姿で、全身が赤いです。朱雀の尾はクジャクのものに似ていて、青や黄色などカラフルな色をなしています。
- 備考 鳳凰を含め、フェニックスなどとも混同されます。
鳳凰(ほうおう)

中国古来の神鳥で、吉兆や慶事(おめでたいこと)が近づいていることを知らせるために現れます。
鳳凰は雌雄のつがいで、「鳳」はオス、「凰」はメスを表します。
また、鳳凰は四霊という神獣のグループに属していて、中国神話ではこの世の創造に携わりました。
四霊は、五行・季節・方位の創造にかかわり、鳳凰は朱雀が守護する「南・火・夏」を生み出しました。
- ふるまい 主に、優秀で徳の高い皇帝や王様が生まれるとき、その祝福のために空を舞います。
また、人の性質を見定め、善良な人や真面目な人を助け幸福を運びます。 - 出現期 古代中国、前漢の時代から
- 出没地域 中国、日本、東アジア全域
- 姿形 頭部はニワトリ、顎はツバメ、首はヘビ、背中は亀、尻尾は魚とされています。
長い尾っぽはクジャクのものと類似していて、中国思想で重要な五色(黒・白・赤・青・黄)をしています。 - 大きさ 一説では、3mほどあるとされます。
双睛(そうせい)

別名は「重明の鳥」(ちょうめいのとり)といいます。
天神が降臨して、70年ほど経った時に記念の品として贈られました。
- ふるまい 人前にはまず姿を現しませんでした。ですのでまれに姿を見せると、人々はよいことがあるとして喜びました。
ひとたび双睛が地上に降り立つと、もののけなどの害獣は恐れて逃げていきました。
人間には基本親切ですが、悪事を働くと見限ってしまうので、人々は双睛がくる庭を常にきれいに保っていました。 - 出現期 古代中国初期(紀元前)
- 出没地域 中国
- 姿形 ニワトリの姿ですが、瞳の中に二つの目があります。
鳴き声は鳳凰のごとく美しく、翼の毛が抜け落ちても羽ばたくことができました。
世界の神鳥・幻獣
ジャターユ
インド・ヒンドゥー教聖典における、叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する鳥の王様です。
年齢は6000歳ほどで、兄弟にサムパーティという鳥の王がいます。
若鳥の頃、兄とともにインドラ(天神)を討とうと太陽の近くまで昇りました。
しかし、鳥たちは太陽の熱によって霊力を奪われ、地上に落ちてしまいます。
サムパーティがジャターユをかばいますが、兄の翼は太陽の光に焼かれます。
結果的に、兄弟鳥はそれぞれ別の場所に落ち、ジャターユはダンダカの森に暮らすようになりました。
それから、ダンダカの森にやってきたラーマ王子(ラーマーヤナの主人公)と打ち解け、彼の妻であるシータを守護することを誓います。
- 出現期 インド叙事詩『ラーマーヤナ』
- 出没地域 インド・ダンダカの森
- 姿形 年老いたハゲタカの姿をしています。そのかぎ爪はゾウの鼻ほど長いとされています。
ハーピー/ハルピュイア
ギリシャ神話に登場する半人半鳥の幻獣です。
名前の意味は「掠める者」です。姉妹にアイリスという虹の女神がいます。
また、いくつかの女神(姉妹)、アエロー・オキュペテー・ケライノー・ポダルゲーの四姉妹をさす総称でもあります。
起源は、ギリシャ・クレタ島に住む風を操る女神といわれています。
伝承では、冥王ハデスやゼウスの手下で、非常に貪欲で乱暴な魔物として描かれています。
- 出現期 ギリシャ神話
- 出没地域 古代ギリシャ
- 姿形 頭部から上半身が人間の女性、下半身と翼は鳥とされています。
ゼウスの手下として描かれるときは、おばあさんの顔にハゲタカの翼、ワシの爪をもっています。 - 逸話 『アルゴー号の探索』では、トラキアの国王で盲目の予言者・ピネウスをこらしめています。
ここでは、国王の料理を勝手に食い散らかして食卓をめちゃめちゃにしています。
フェニックス

エジプト神話の神鳥「ベンヌ」から発展した、伝説の鳥です。
- ふるまい 死期が近づくと、自らたき火に飛び込んで命を絶ちます。
死んでもふたたびよみがえることから、「不死鳥」またはその行動から「火の鳥」ともいわれます。 - 出現期 古代より
- 出没地域 アフリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各地
- 姿形 全身に炎をまとった鳥で、中国の鳳凰とも似ています。
伝承によっては、赤と金の翼をもつワシのような姿で描かれます。 - 逸話 原型となったベンヌは、太陽神ラーにつかえていました。
当時の民衆は太陽の動きを神格化していました。
日没とは、ベンヌが毎晩ラーの神殿の炎に身を投げて、再生することだと解釈されました。
まとめ
鳥の神、といっても「神鳥」といわれたり「霊鳥」といわれたり、表現はさまざまです。
ある鳥は、神話や伝承によっては、「尊い」立場から「いやしい」立場になっていたりします。
身近な生き物である鳥を通して、昔の人々は自然への畏敬や人の生きざまを表現したんですね。